言葉には、話す人やその地域の「空気」みたいなものが、もろに表れます。
人柄とか
価値観とか。
文化とか。
ラオス語に触れていても、やっぱりそれを感じます。
以前の記事では「キット・ホート(恋しい・懐かしい)」という言葉や、「ボーペンニャン(大丈夫!)」について紹介しました。
よく耳にする言葉から、人とのつながりを大事にしたり、おおらかでことなかれ主義なラオス人の性格が、垣間見えるってお話でした。
今回は、何気ないけど、すごくラオスらしいなって思う表現、
「キンカオ・レオボー」
について書いてみたいと思います。
「キンカオ・レオボー」ってどんな意味?
ラオス語の「キンカオ・レオボー ກິນເຂົ້າແລ້ວບໍ່」
キンカオ:ご飯を食べる
レオボー:終わった?
日本語に訳せば「ご飯食べた?」ってことです。
実際には、これをもう少し簡略化した、
「キンカオ・ラ ກິນເຂົ້າລະ」
あるいは
「キンカオ・レ ກິນເຂົ້າແລະ」
を日常ではよく使います。
ちなみに、これに対する返事は、
キンレオ:食べた
ニャン:まだ
となります。
日本でももちろん、人にご飯を食べたか聞く場面はありますよね。
でもラオスでは、それ以上に頻繁に、「ご飯食べた?」ってたずねあいます。
ものの本には、あいさつ代わりに「キンカオ・レオボー」と聞く、なんて書いてあったりします。
ただ、実際のところ、この言葉は誰にでもかれにでも使うわけではありません。
だから、あいさつ代わりっていうのはちょっと語弊がある気がします。
じゃあ、どういうニュアンスで使われているんでしょう?
誰にでも言うってわけじゃない「ご飯食べた?」
ラオス人はどうしていちいち、「ご飯食べた?」って聞くの?
ラオスに住みはじめて間もないころ、疑問に思ってラオス人に聞いたことがあります。
そうすると、こんな答えが返ってきました。
「ご飯を食べた?」って聞くのは、「あなたのことを気にかけています」っていうことなんだよ。
家族とか、恋人とか、大切な人が、
「ちゃんとお腹いっぱい食べているか、心配事なく幸せに過ごしているか」
って気持ちをこめて、「キンカオ・ラ」ってたずねる。
だから、ただの友達とか、別に大事じゃない人には、そんなに言わない。
普通に「最近どう?」とか聞く。
確かにそうなんです。
日常的にこの言葉を使いあうかっていうと、そうでもないんですね。
例えば職場の同僚とかは、別にそんなこと聞きあってない。
まあ、昼休憩の時間になってもまだ仕事している人がいたりしたら、「ご飯食べないの?」とか聞いたりはしますし、状況によりますけれど。
でも一方で、ラオス人の恋人がいたりしたら、本当にしょっちゅう聞かれます。
会えない日などに、メッセージを送ったり電話したりすると、とりあえず会話のとっかかりに、
「キンカオ・ラ」
これは、「あなたのことが心配だ、気にかけている」ということの表現なんですね。
恋人だけではなく、家族同士でも、特に普段一緒に暮らしていない場合には、電話などでこの言葉をたずねあいます。
仲良くしている家族のおうちに顔を出したりしても、ほぼ必ず、「キンカオ・レ」と聞かれます。
(特に田舎でその傾向が強い気がしますね)
それがまた、10時半とか微妙な時間に聞かれたりして、
「それは朝ごはんのことか、昼ごはんのことか」
とか考えて答えに迷ったりするんですが。
でもそこで「まだ」って答えると、本当にご飯が出てきちゃうので、普通は「食べたよ、キンレオ」って答えます。
まず腹が満ちることが、幸せの基本
「ご飯を食べた?」って聞きあうことの背景には、「食べるに困らないことが幸せの基本」というラオス人の価値観があるんだと思います。
それは、他の言葉にも表れています。
例えば、ラオス語では誕生日や、結婚式などの日に、「おめでとう」という意味で「スック・サン ສຸກສັນ」という言葉を使います。
「誕生日おめでとう」なら「スック・サン・ワンクート」。
(ワン・クート:誕生日)
このスックサンという言葉は直訳すると、
スック:幸せ
サン:食べる
だから、スックサンというのは、
「あなたが幸せで、おいしくご飯を食べて満ちたりた暮らしを送れますように」
という意味で「おめでとう」なんだそうです。
この言葉からも、ラオス人にとって、「食べること」が「幸せ」のためにいかに大切なのか、ということがうかがいが知れますね。
大事な人には「キンカオ・レオボー」って聞いてみよう
ということで、あいさつ代わりに誰にでも使うのはさすがに、ちょっとやりすぎですが。
ラオス人の知り合いがいて、もしその人があなたにとって大事な人なら、とりあえず「キンカオ・レオボー」とか「キンカオ・ラ」って聞いてみましょう。
それだけでも、その人との関係が少し、暖かなものになることでしょう。
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