こんにちは。ラオス在住9年目のちこです。
海外に住んでいて、現地の人と接していると、文化や習慣、価値観の違いに由来するような、「性格」「考え方」の違いを、どうしても感じるときがあります。
それは、宗教的慣習や言葉など、目に見え、耳に聞こえる、わかりやすいものであるときもあります。
でも多くの場合は、日本やその他の国にも類似したものがあって、でも、やっぱりどこか違う、という微妙な形であらわれます。
類似しているからこそ、自分が知っている考え方にあてはめて理解してしまい、勘違いのもとになることも。
私もありました。
最初は理解に苦しんだこと、勘違いしていたこと。
今日はその中から、シンプルだけど奥深く、その語感を理解するまでに時間のかかった「キット・ホート」、日本語では「恋しい」と訳される言葉から、ラオス人の考え方を垣間見てみたいと思います。
「キット・ホート」ってどういう意味?
まずは辞書的意味から。
現在ある、たぶん唯一の日・ラオ辞典、Techan-Net Training Centerの「日本語・ラオス語辞典」第二版をひいてみます。
ちなみにこの辞書、スマホのアプリでも出ているので、ラオス語学習者はぜひインストールしておきましょう!
(アイキャッチ画像もその一部を拝借してきましたよ)
調べると、4つの意味が出てきました。
ຄິດຮອດ(キット・ホート):
恋しい
懐かしい
慕う
恋しく思う
例文としては、次のようなものがあげられています。
ຄິດຮອດບ້ານເກີດ(キット・ホート・バーン・クート)
故郷を恋しく思うຂ້ອຍຄິດຮອດນາງ(コイ・キット・ホート・ナーン)
私は彼女が恋しいຄິດຮອດສະໄໝເປັນນັກສຶກສາ(キット・ホート・サマイ・ペン・ナックスクサー)
学生時代が懐かしい
直訳すれば、
「キット」は考える、思う。
「ホート」は届く、着く。
という意味です。
タイ語で言う「キット・トゥン คิดถึง」と同じ意味の言葉ですね。
ラオス人の恋人でもできようものなら、毎日、電話やメッセージで「キット・ホート」の嵐を受けることでしょう。
ラオス人はなんでもかんでも「恋しい」!?
恋愛に関わらず、この言葉、ラオス人はひじょ~~に多用します。
何かあれば、「キット・ホート」。
恋人はもちろん、家族、友達に対してもしょっちゅう使います。
若者も、中年も、お年寄りでも。
私は心の中で、
「なんでラオス人はやたら恋しがるんだ? 寂しがり屋なのか?」
と思っていましたよ。
まあ、実際そういう一面もあるのですが。
でも、この「キット・ホート」という言葉、長くラオス人と関わるうちに、だんだんと、「恋しい」とも「懐かしい」とも訳しきれない、様々な使い方をすることを知りました。
例1.畑が気になる キット・ホート・ハイ
農村にいたとき、ある家族の旦那さんが数日入院して、その付き添いで奥さんが病院に滞在していました。
私がお見舞いに行ったとき、会話の中で奥さんがふと言った言葉。
「キット・ホート・ハイ」
(ハイ:山の畑)
畑が恋しい!?
いやいや。
もちろん、何か月、何年も離れていたら、畑が恋しい、懐かしいってわかります。
でもだって、畑に行けなくなってまだ3,4日だよね。
これは、どちらかというと「気になる」という意味で使われているようでした。
畑の作物は元気に育っているか。
留守の間に、イノシシでも入って荒らされていないか。
気になるってことなのです。
例2.携帯電話がなくて落ち着かない キット・ホート・トーラサップ
携帯を家に忘れた人が、ふと無意識にポケットを探って、持っていないことを思い出して。
「キット・ホート・トーラサップ」
(トーラサップ:電話)
電話が恋しい!?
いやいや。
恋しいというより、普段使いなれているものが手元になくて、「落ち着かない」程度の意味なんでしょうね。
「キット・ホート」は「思いを馳せる」
じゃあ結局、この「キット・ホート」って、どういうニュアンスで、どういうときに使うのでしょうか。
私の経験からすると、それは、
今、側にいない誰かや何かを「ふと思い出したとき」
つまり、恋しいというよりも、「キット:思う、ホート:届く」という直訳の通り、
「思いが何かに向かって届く」=「思いを馳せる」「ふと思い出す」
という方が近いのです。
何かをしていて、考えごとをしていて、誰かとしゃべっていて、今ここにいない人や物事のことが頭に浮かべば、それが「キット・ホート」。
それを家族や友達にも言葉にして伝えるのは、「私はあなたのことを気にかけている」「あなたのことを忘れていない」という、好意の表現なのです。
ふとした拍子に誰かを思い出す。
それで連絡をとってみる。
そうすることで、人との関係がゆるくつながっていく。
あるいは、人や物のことを気にかけ、大事にしていく。
ラオス人がなんでもかんでも「キット・ホート」なのは、そうした彼らのあり方からきているんだと想像しています。
ま、口先だけの「キット・ホート」もいっぱいありますけどね!
↓↓言葉から読みとくラオス人の性格シリーズ
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