ラオス版のお盆「ブン・ホーカオ・パダップディン」

人々の暮らし

ラオスでは仏教が多くの人に信仰されていますが、その一方で、古くからある土着の祖霊信仰・精霊信仰なども広く生活の中に混じって存在しています。

 

日本にも神道や、あるいは「宗教」というくくりでは説明しにくいような、「自然の中に宿る神様」という考えがありますよね。

 

日本とラオス。
地理的にも遠くない、同じアジアです。
どこか、似たところがあるのも不思議ではありません。

 

それを一番感じたのが、ラオスで8月下旬ごろに行われる行事「ブン・ホーカオ・パダップディン」。

 

これ、日本のお盆にそっくりなんです。

 

ラオスと日本の宗教観は似ている!?

よく、現代の日本人は「無宗教」って言います。

 

でも実際は、広く自然の中にいる霊や神様もなんとなく信じている、というのが私の感覚です。

 

神社に行くとやっぱり、自然と手を合わせたくなるし。
立派なご神木を見上げると、「何かいそう」って思ったり。
古い人形を捨てると祟られるような気がしたり。
お墓にいくと、幽霊が出そうな気がしたり。

 

強い信仰心はないけど、「自然の中や古いものの中には、やっぱり何か霊や神様がいるかもしれない」なんて思う。

そして普段は、特に宗教を意識せず生きている。

 

そういう、色々なものを信じているような、いないようなというのが、現代の日本人に一般的な宗教観なのかなと思います。

 

 

ラオスでもそんな日本の宗教観と似た部分があります。

広く信じられているのは「仏教」、その中でも日本とはちょっと違う「上座部仏教」が主です。
その一方で、「精霊信仰」が色濃く信じられている地域・民族も広く存在しています。

 

また、一見「仏教徒」であるラオス人も、実は日常の中で、仏教だけでは説明できないような、幽霊や精霊(ラオス語では「ピー」と言います)や、人の体に宿る「魂」であるとか、死んだ人の「霊」なども信じられ、様々な行事の中でも現れたりします。

 

とはいえ、現代のラオスでは、熱心に宗教を信仰する人は、それほど多くない印象です。

特に都市部では、日本のように、普段は特に宗教を意識しないけれど、節目節目の行事には参加するというような感じです。

 

そんな風に、ゆるく「仏教」とその他のいろんな「霊」や「精霊」を信じるラオス人のあり方は、日本人の宗教観とも通ずるものがある気がします。

 

それがよく表れている行事のひとつに、ラオス版のお盆ともいうべき、「ブン・ホーカオ・パダップディン」があります。

 

そもそも、お盆ってどんな行事だっけ?

日本では、お盆の存在を知らない人は、少ないと思います。

でも、じゃあお盆ってそもそも、どういう意味があったんだっけ?と聞かれると、意外と知らない人もいるんじゃないでしょうか。

 

私の地元の大阪では、「お盆といえば屋台と盆踊り」というくらいの認識しかなく、お盆らしい行事を見たことはありませんでした。

でも、その後しばらく住んでいた京都では、昔ながらの「お盆」がまだ広く行われていました。
有名な「大文字の送り火」もありますしね。

 

お盆(おぼん)とは、日本で夏季に行われる祖先の霊を祀る一連の行事。日本古来の祖霊信仰と仏教が融合した行事である。

-引用:Wikipedia

地方によって風習は様々なようですが、13日に祖先の霊をお迎えし、供養し、15日に送り出すというのが一般的だそうです。

お迎えのキュウリの馬と、送るナスの牛を作るって聞きますよね。
(私は実物を見たことがないのですが…)

 

京都の「大文字の送り火」も、祖先の霊を送り出すというのが、元々の意味だそうです。

 

ラオスの「ブン・ホーカオパダップディン」

ひるがえって、ラオスの「ブン・ホーカオ・パダップディン ບຸນຫໍ່ເຂົ້າປະດັບດິນ

直訳すると、「ご飯を包み、大地に飾る祭」。

 

毎年太陰暦の9月の新月の日に行われます。

今年は8月29日でした。

偶然なのか、日本のお盆とも近い時期ですね。

 

このお祭りは、お盆と同じく、「祖霊を供養する行事」です。

この日には、亡くなった人の霊が家族や子孫のもとを訪れるので、それをお迎えして供養する日なんだそうです。

 

特に、親や兄弟など近い家族で亡くなった人がいる人は、この行事をとても大事にするのだそうです。

 

食べものを乗せた舟を供える

この行事の前日には、バナナの葉っぱで作った小さな舟に、様々な食べ物を入れたものを準備します。

中身は、もち米のココナッツミルク蒸し「カオトム」はじめ、サツマイモ、カボチャ、サトウキビ、タマリンド、野生の木の実や果物、お菓子、小魚などです。

 

特に、8月が旬の様々な「森の木の実」を入れるのが印象的でした。
きっと、古くからある行事なんだろうなと思わされれます。

 

そして、当日の真夜中、2~3時頃起きだしてきます。
新月の日なので、月はなく辺りは真っ暗です。

 

用意したたくさんの小舟をたずさえて、まずはお寺に行きます。
そこで、舟に入れた食べ物を供えます。

それから、そこを起点として、家へ帰るまでの道々で、この舟を少しずつ、霊に食べてもらうために供えていくのです。

最後に家の周りにも舟を供え、ろうそくに火を灯して、祖先や亡くなった人を供養します。

 

その後、朝の6時ごろ、もう一度お寺に行って喜捨をします。

 

こうして見ると、日本のお盆と似ていて、古くからあった祖霊信仰に、仏教が融合した行事らしいことが、うかがえますね。

 

ラオスと日本には似た部分もある

こんな風に、ラオスに暮らしていると、ふとした瞬間に、日本にも通ずるような文化や風習、ものの考え方に出会うことがしばしばあります。

 

同じアジアで、豊かな自然に恵まれ、長く仏教の影響を強く受けてきた地域だという共通点がありますしね。

 

ラオスは日本にとってあまり馴染みのない国かもしれませんが、実は近い部分もあるのかもしれません。

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