こんにちは。ラオス周辺の森をぶらぶらしているちこです。
東南アジアの森を調査していると、日本では見られない、変わった動植物によく出会います。
生きものの進化と生存戦略ってすごいです。
なんのためにそんな形になるの? とか。
そんな生き方もあるのね。とか。
素直に感心することしばしば。
今日はその中から、通称「絞め殺しイチジク」と呼ばれる(私が勝手に呼んでるだけ?)植物について紹介したいと思います。
絞め殺しイチジク
あの果物を食べるイチジクの仲間、Ficus属の木の一部に、他の木にとりついて成長し、だんだんと親木を覆っていき、最後には殺してしまう、というなかなか恐ろしいやつばらがいます。
英語では「Strangling fig」
ラオス語では「コック・ハイ ກົກໄຮ」と呼びます。
↓↓こんな感じです。
わかるでしょうか?
うねうねと木を覆っているのは、この「絞め殺しイチジク」の根です。
この木は、他の木のように、自分で上へ上へと成長していく力がありません。
そこで、鳥の糞などに混じって木の上に落ちた種が発芽し、そいつが下へ下へ根を伸ばしながら成長します。
根が地面に達すると、今度はどんどん木の周りを覆うように育っていき、ついには覆いつくして、取り付いている木を殺してしまうのです。
なんてやつでしょう。
でもそれが、種を残すための、彼らの戦略なわけです。
鬱蒼としたジャングルの中で、他の大木に負けずに育つには、確かに賢い方法ではありますよね。
ヤシの木の途中にとりついている。
寄生していた木が死んだあとは、平然と、普通の木のふりして立ってますね。
ここまで成長すると、こいつが元はうねうねとした根だったなんて、わかりません。
ちなみに、タイの有名な「アユタヤ遺跡」で仏様を覆っているのもこやつです。
小さなイチジクは、鳥の大好物
この木は大きくなると、赤やオレンジ、濃い赤紫色などの、小さなイチジク似の実をつけます。
この実が、鳥の大好物。
ときどき森の中で、ぴいちくぱあちく、鳥が盛んに鳴いている場所があって、見上げるとこのイチジクの実にたくさん集まっていたりします。
鳥に実を食べてもらい、別の場所で糞に混じって落ちて、運よく木の上で発芽したものが、また木を絞め殺しながら育っていきます。
なので、鳥と絞め殺しイチジクは、持ちつ持たれつです。
ちなみに、この木の花の受粉を媒介するのは小さなハチです。
ハチが花の中に卵を産み、そのときに受粉を助けるのですね。
ですので、ハチとも持ちつ持たれつです。
木を殺し、鳥やハチを養う
自然界って、本当によくできていますね。
鳥やハチに助けてもらいながら、競争相手の木を蹴散らし、熱帯のジャングルの中で育っていく絞め殺しイチジク。
初めて見ると、その異様な風体にぎょっとしますが、でもこれもまた生物の進化のたまもの、生存戦略なんだと思うと、感心してしまいます。
こんな風に、ちょっと変わった生き物に出会うから、森歩きは楽しいのです。
コメント
写真の一部が ceiba tree or kapok tree に似ていたので、ネットで調べてみたらウィキペディアのTa Prohm のところ(https://en.wikipedia.org/wiki/Ta_Prohm)で、大きな木はsilk-cotton tree (Ceiba pentandra) or thitpok Tetrameles nudiflora,で、小さな木は strangler fig (Ficus gibbosa).[12] or gold apple (Diospyros decandra)とありましたがいかがでしょうか? ceiba ( kapok)は時期になると大きな実を付けて、実が弾けると白い綿に包まれた黒い種が舞い落ちるようです。
コメントありがとうございます。
ご指摘の通り、Tetrameles nudifloraも根が這いずり回るような育ち方をして、遺跡を侵食したりしますよね。
写真をもう一度確認しましたが、気根が融合しながら成長したような形跡がみえるので、たぶんFicusだと思うのですが……。
(Tetrameles nudifloraは気根は普通出ませんので)
Ceiba pentandraは確か、こういった育ち方はしませんが、樹皮の感じは似ていますよね(^^)