日本とラオスの森の意外なつながり

森と生きもの

こんにちは。ラオスで森に関わる仕事をしている、ちこです。

最近、日本でも少しずつラオスが注目されはじめているようですね。
それでも、普段生活していて、ラオスを身近に感じることって、なかなかないと思います。

 

ですが、実は日本とラオスの森は、昔から意外なところで、つながってきました。

今日はそんな、ラオスの森の産品のお話です。

 

豊かだった、ラオスの森

ラオスはかつてフランスの植民地でした。
その後、長い独立戦争ののち、現在の社会主義政府が樹立されたのが、1975年。
さらに、市場が解放されて、外国資本が入り、急激に近代的な開発が進んだのは、1986年以降のことです。

 

 

ラオスの重要な資源のひとつが、豊かな森と、そこからとれる、良質な木材や香木です。

 

しかし、独立後、急速に森林伐採が進みました。
そのため、1960年代には約70%だった森林被覆率も、今ではその半分近くの約40%にまで落ち込んでいます。

 

 

森林減少の原因のひとつに、輸出目的の木材伐採がありました。
(現在は法令で、天然木の伐採と原木の輸出は禁止されていますが)

 

ラオスでは、紫檀や黒檀、カリンなどの高品質で木目も美しい、高級材がとれる樹木が、多く生育しています。

そうした木材は、家具や彫刻などに利用されます。

 

カリン材。特に、このような変わった木目の材は、高値で取引される

 

木材伐採の主な業者は、中国人やベトナム人だと言われています。
でも、その中には日本人も含まれていたことは、あまり知られていないのではないでしょうか?

 

木材だけではありません。

他にも様々なラオスの林産物が、現在でも、実は日本へ入ってきているのです。

 

ここでは、そのうちの3種類をご紹介したいと思います。

 

日本の寺になった、ラオスヒノキ

ラオス北部にシェンクワンという県があります。

そこは、中心地の街・ポンサワンでも標高1000mを超える、高原地帯です。

 

ポンサワンの町

うねうねとした丘陵地に、草原が広がる

 

写真のように、土壌と気候のために、熱帯とは思えない草原地帯になっており、その周辺の山にはマツやヒノキといった針葉樹を中心とした、冷涼な気候に適応した森林があります。

 

そんなシェンクワンの森には、ラオスの中でもそこだけで生育する、ラオスヒノキ(Fokienia hodginsii)があります。
日本のヒノキと種類は違いますが、同じような色・木目で、香りも似ています。

 

この木が、おそらく数十年ほど前くらいでしょうか。
ちゃんとした資料がないので、定かな数字はわからないのですが、日本に大量に輸出されていたといいます。
今では、大きな木はほとんど残っていないそうです。

 

このラオスヒノキが日本で何に使われていたかというと……
お寺や神社の建設・補修です。

 

日本の寺社には、たくさんの木が使われています。
その中でも、柱に利用できるような、まっすぐで太いヒノキは、近年日本ではなかなか手に入りません。

 

そのために、日本の木材業者は、優良なヒノキをもとめ、初めは台湾へ。
台湾の木が尽きると、その次に、ラオスのヒノキに目をつけたというのです。

 

もともと、それほど資源量の多くなかったラオスヒノキは、あっという間になくなってしまったといいます。

 

実はあなたの町のお寺の柱、ラオスから来たのかもしれませんよ?

 

線香の原材料、ムアック

ラオスの主に北部の森林に、ラオス語で「ムアック」という名前の小さな木があります。
この植物の皮は、粉にして、線香のつなぎとして利用されます。

 

採集されたムアックの重さをはかり、業者が買い取る

 

地元の人が採集したこの木の皮を、業者が買い取り、国外へ輸出します。

 

現在の主な輸出先は、中国やタイだといいます。
タイも仏教国で、日常的に線香を使いますので、需要があるのですね。

 

ですが、その大半は、中国に出ているといいます。
この中国へ流れる「ムアック」の皮。
その少なくない量が、最終的に日本へ輸出されているのだそうです。

 

日本で、様々な香りの原料と混ぜ合わされ、線香が生産されるのです。

 

私も、ラオスに来るまでそんな話は知りませんでした。
お仏壇にある線香が、どうやって作られているのか……なかなか、意識して考えませんよね。

 

ラオス産「備長炭」

ラオスでは伝統的に炭焼きが行われ、日常生活の中で使われてきました。

それがここ10年ほどでしょうか。日本の備長炭づくりの技術を取り入れた高級炭の生産が、日本への輸出用として広まっています。

 

 

日本では、備長炭にはウバメガシなどカシの仲間の木が利用されますが、
ラオスでは、カシとは全然違った種類のCratoxylum属の木、「マイ・ティウ」が使われます。

 

この木から作った炭は非常に硬くて、叩くと「キン、キン」と金属を打ち合わせたような高い音がします。

 

 

持ちがよくて、煙が少なく、使っていてはぜたりもしないので、焼き鳥屋さんなど、炭火焼きメニューのあるお店に卸されるのだとか。

 

今度、焼肉屋さんなどに行く機会があったら、こっそり観察してみてください。
もしかしたら「羅宇(らう)備長炭」などと書かれた、ラオス産の炭の箱があるかも。
(知り合いは見たそうです)

 

実は身近にある「ラオス」

こんな風に、昔から今まで、ラオスの森から出た産品が日本に届いていました。
ただ、私たちが知らないだけで。

 

探してみれば、まだまだ、日本とラオスの意外なつながりは、あるに違いないと思います。

 

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