住んでいれば自然と覚える!? ラオスのタイ語事情

ラオス語・その他言語

こんにちは。ラオス在住9年目のちこですが、実はタイ語もちょっとわかります。
勉強したわけじゃなくて、ラオスにいると触れる機会が多く、自然と覚えてしまったのです。

 

外国人の私ですらそうなので、ほとんどのラオス人は、かなりタイ語ができます。

ラオス語もタイ語も、タイ系の言語で、もともとよく似ている、というのがその一番の理由でしょうね。

 

でもそれだけではなく、その背景には、文化的・社会的な事情がからんでいます。

 

*私は言語学の専門家ではないので、以下の内容はあくまでも、個人の見解です。

 

タイ語とラオス語の違い

似ているとはいえ、細かいところで様々な違いはあります。
その違いは、大きく4つにわけられると思います。

 

1.文字の違い

「ありがとう」をそれぞれの言葉で比較してみます。

 

ラオス語:ຂອບໃຈ  (コープチャイ)

タイ語:ขอบคุณค่ะ (コープクン・カ)

 

ぱっと見の印象はけっこう違いますね。

ラオス語のほうがくるくる丸い感じ、タイ語のほうがカクカクしてます。

 

でも、互いに対応する文字はあり、ラオス語・タイ語どちらかを知っていれば、類推はできます。

 

ただ、ラオス語は、タイ語にくらべ様々な表記や発音が簡略化されています。
アルファベットの数も、タイ語42字、ラオス語は27字と、ラオス語のほうが大分少ないです。

 

2.単語の違い

日常で使う表現のいくつかは、ラオス語とタイ語で単語が異なります。

 

ラオス語 タイ語 意味
  ສະບາຍດີ 

(サバイディー)

   สวัสดีค่ะ 

(サワッディカ)

こんにちは
  ມີຫຼາຍ   

(ミーラーイ)

   มีเยอะ      

(ミーユォ)

たくさんある
  ຢູ່ໃສ   

(ユーサイ)

   อยู่ที่ไหน 

(ユーティナイ)

どこにいるの?

 

こうしてみてみると、共通部分もありながら、一部の単語が違う感じ、わかるでしょうか。

 

3.発音の違い

同じ単語で、発音だけが違う、という場合もあります。

 

ラオス語 タイ語 意味
  ໂຮງຮຽນ 

(ホンヒアン)

   โรงเรียน 

(ロンリアン)

学校
  ຍຸງ    

(ニュン)

   ยุง      

(ユン)

  ຊ້າງ   

(サーン)

     ช้าง         

(チャーン)

ゾウ

 

この他にも、タイ語には二重母音があるが、ラオス語にはない、といった違いもあります。

 

4.声調の違い

声調というのは、音の上がり下がりや抑揚のことで、同じ音の単語でも、声調が違えばまったく別の意味の言葉になります。

わかりにくいと思うので、例をあげてもう少し説明しましょう。

 

1.ຊ່າງ (サーン) 技術者・職人
2.ຊ້າງ (サーン) ゾウ

1のサーンは平坦な音、2のサーンはぐっと下がり調子で読みます。

 

*文字の上にくっついている記号が声調を表します。

 

この声調が、ラオス語とタイ語ではずいぶんと違います。

どう違うのかを言葉で説明するのは、なかなか難しいですが、例えば上にも出てきた「ゾウ」。
発音だけではなく、声調も異なります。

 

ラオス語:ຊ້າງ サーン(ぐっと下がり調子)
タイ語:ช้าง  チャーン(ゆるく上がり調子)

 

響きとしての”タイ語らしさ””ラオス語らしさ”の決め手は、この声調にあると思います。

 

知り合いに、タイ在住歴が長くタイ語が堪能な日本人のIさんという方がいるのですが、
私がタイ語をしゃべると、

 

Iさん 「ちこのタイ語はなんか怪しい」

 ちこ 「ほっといてください。でも、Iさんのラオス語もちょっと変です」

 

なんて言い合いになります。

 

ふたりとも、単語や発音はあっているのですが、声調がどうしても、馴染んだ言語のものになってしまうため、ラオス訛りのタイ語やその逆になってしまうのですね。

 


 

以上、ラオス語とタイ語の4つの違いを紹介しました。

こうしてみてみると、かなり似てはいるものの、やはり、まったく学ばずに互いの言語を使うのは、難しいかと思います。

 

実際、ラオス語のわからないタイ人は多いと聞きますしね。

 

では、どうしてラオスに住んでいると、タイ語ができるようになるのでしょうか。

 

なぜラオス人はタイ語ができるのか?

以下に、普段の生活を振り返ってみて、ラオス人がどこからタイ語を学ぶのか、考えてみたいと思います。

 

1.タイのドラマ

ラオスのテレビ番組は、はっきりいってしょぼいです。
ニュース以外に見ている人はほとんどいない。

 

昼間の食堂で、あるいは夜の団欒の場で流れるのはタイ番組。
基本は衛星放送なので、お隣のラオスでは、どんな田舎でもタイの番組が見られます。

 

その中でも人気なのが、ドラマ。
大体が男女の恋愛関係のもつれを描いたどろどろした話が多いですが、ラオス人の特に子どもや女性は、好きな人が多いみたいですね。

毎日のように見ていれば、タイ語の言い回しを覚えてしまうのですね。

 

2.タイの歌

タイ・ポップスはラオスの特に若い人にはとても人気です。
みんなユーチューブからタウンロードしたりして、自分の携帯電話にたくさんのタイの歌を入れて、いつも聴いています。

 

レストランで流れるのも、カラオケ飲み屋に行ってみんなが歌うのも、たぶん半分以上がタイの歌。

 

私なんかは、ドラマよりは歌から、タイ語を覚えました。
ドラマだと字幕がないので、見ててもあまりわからなかったりするのですが、飲み屋のカラオケだとタイ語の歌詞を読みながら歌を聴けるので、単語や言い回しの違いがすぐ目につきます。

 

3.タイ語の映画

ラオスにおいて、映画産業は今が黎明期といっても過言ではないでしょう。

現在のところ、ラオス語で観られる映画は、本当に限られています。
そのため、ラオス人が映画を観る際は、ほぼタイ映画あるいはタイ語吹替/字幕のものになります。

 

4.携帯の文字入力

少し前までラオスには、ラオス語の表示・入力ができる携帯電話がありませんでした。
それで、ラオスの人たちはメッセージを送りあうときには、タイ文字で代用していました。

 

そのため、今でも習慣的に、SNSやメッセージのやりとりでタイ文字を使う人も多いです。
若い子のもっているような廉価版の機種は、ラオス語入力ができないものも、まだありますしね。

 

タイ文字をつかったやりとりは、例えば、こんな感じ。

 

これ、文字がタイ語なだけで、書いてあることは完全にラオス語です。

 

5.タイ語の文献・ウェブサイト

ラオスは圧倒的に情報不足の国です。
仕事柄、植物や森、農業などに関する文献をよく調べるのですが、ラオス語の文献はまあ、ないに等しい。

そのため仕方なしに、タイの文献をあたることがあります。
結果として、タイ語の書き言葉や専門用語を、必要に迫られて覚えます。

 

大学生が卒論を書くときにも、大体タイ語の文献を引用していますね。
ラオスでは、タイ語を読めないと、十分な情報が得られないので、特に高等教育を受ける人にタイ語は必須です。

 

ラオスでは、タイ語なしにはやっていけない!?

以上のように、ラオスに住んでいて、日常の中でタイ語に触れる機会はとても多いです。

 

その背景には、タイ大衆文化の人気ぶりや、インフラや情報面がまだまだ整備されていない、ラオスの社会的な事情がからんでいます。

 

でもまあ、考えようによっては、ラオスに住んでいるだけで2つの言葉を習得できるので、お得かも?

 

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